引きこもりの一声 part2

目覚めると真っ暗で蒸し暑い空間に俺はいた。

ついに電気を止められてしまったのかと軽い絶望感に囚われるが、それよりも喉の渇きに先に気がいってしまい手探りで流しの方へと向かう。幸いにも水道はまだ止められておらず、生ぬるい水道水をコップで口へと運ぶ。喉の渇きを癒した俺は改めて電気を止められた絶望感を感じ始めた。このくそ暑い熱帯夜にクーラーも使えないとなると死んでしまうのではないか。そう考え始めると昨日の夜までは居心地の良かった6畳の空間が自分を苦しめる独房のように思えてくる。

事の大きさをじわじわと理解し始めた俺はとりあえず外に出て散歩をすることにした。自分が追い込まれるとすぐに現実逃避するのは俺の悪い癖だが、それでもこの蒸し暑い部屋にいるよりは外で散歩しながら思案する方がよっぽど賢明だと思った。

部屋の時計を見たとき、針は夜中の3時を指していた。案の定外に出ると多少の風が吹いており、室内よりも幾分か涼しかった。階段を下りて近くを散歩する。辺りは静まり返り、自分の足音と虫の鳴き声以外は何も聞こえなかった。

 

なぜこんなことになってしまったのだろうか。

 

いや、答えなんてわかりきっている。俺が就活に嫌気がさして引きニートをしていることが元凶だろう。

俺はきっとそれなりの人生を歩んできたと自負していた。義務教育もしっかりと受け、高校そして大学まで順風満帆に歩んできた。しかし、それは自分が歩んできたつもりになっていただけだと就職活動で思い知らされたのだった。

自分の価値を証明することが求められる面接が俺は苦手だった。自分の価値が見えているという人間というのは、自分で自分の進む道を決めてきたやつだ。自分の価値が説明できない俺は今までをなんとなくで歩んできたことになる。 それに気づいてしまったとき、体から何かが抜け落ちていくのを感じ、そのまま俺は就活を辞めたのだった。

 

どれくらい散歩をしたのか、気づけば雑木林の入り口に俺は立っていた。辺りは相変わらず静かで虫の鳴く声だけがよく響いていた。そろそろ家に帰ろうと思ったその時、雑木林の中程で小さい何かが動くのが見えた。暗闇でかなり見えづらいが何かが確実に動いているのを俺は感じた。

どうせ、虫か何かだろう。

そう思い帰ろうと踵を返すが、やはりなんとなく気になってしまいその正体を確かめることにした。

いいさ、どうせ帰ったって暑い部屋が待ってるだけなのだから。時間は腐るほどある。

 

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