3種のチーズ牛丼

お腹が空いた。。。

夜中の10時。ひたすらゲームに没頭していた私はそこで自分が朝から何も口にしていないことに気がついた。

もはや布団の上から動く気にすらならなかった私だが、アパートで餓死体として発見される自分を想像してようやく重い腰を上げた。

もはや着替える気もなく、寝巻きで寝癖も直さず飯を食べられる場所を考えた。

やはり、あそこしかない。

 

「らっしゃいませー。」

店員の乾いた歓迎の声が人気の少ない店内にこだます。寝起きの私には丁度いい接客だ。

やる気のない足取りで席につき、メニューを開くこともなく注文をこなす。

「3種のチーズ牛丼、特盛で。」

「かしこまりました。」

 

私は出された麦茶を口に含み、本日初となる水分に身体が悦ぶのを感じつつ料理を待った。

 

「おたませしました。3種のチーズ牛丼特盛です。どうぞごゆっくり。」

席についてから3分も待たずにそいつは運ばれてきた。

ひとつの丼の中で完結しているとは思えない圧倒的な存在感。牛肉を優しく包み込んでいるとろけたチーズは慈愛に満ちた眼差しでこちらを見つめている。

 

ジャック・クリスピン曰く、

「飯は冷める前にさっさと食え」だ。

 

箸立てに刺さっている箸をゆっくりと抜き、まずはチーズがかかっていないノーマルな牛丼の部分を口へと運んだ。

 

 

 

うむ、旨い。

 

次にチーズがしっかりとかかった部位に箸を伸ばし、豪快に口へと放り込む。

 

 

 

Buono.

 

そして残りが半分になった頃合で、トレーの上でおあずけを食らっていたタバスコ君に手を伸ばした。

赤い雨が牛肉の大地を潤し、さらなる進化を遂げた後、それを口へと運ぶ。

 

 

 

酸っぱ辛旨い。旨みが口の中で踊り狂う暴風のように広がっていく。

 

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器を空にして誰に言うでもなく、ご馳走様と呟く。腹が満たされ意識がはっきりした私は会計を済ませ、足早に店を出る。 

 

帰り道の踏切で捕まったが、遮断機の音がうるさく感じないほどに心は満たされていた。

川べりの桜はもう咲いて春の訪れを告げている。

 

「帰ったら、寝るか。」

今日も何も無い一日だった。